持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究

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精神科医療における行動制限最小化活動のモニタリングによる最小化支援

精神科医療における隔離や身体的拘束などの行動制限を課題とするのはわが国に限ったことではありません。どの国もその最小化に取り組んでおり、態様は各国様々で、一概に比較することはできません。しかし今、世界のグローバル化の波に乗って、行動制限最小化の方法論も集約されつつあります。2004年に米国で発表された「コア・ストラテジー」(Kevin Ann Huckshorn: Journal of Psychosocial Nursing)は、隔離・身体的拘束最小化のエッセンスを極めて論理的かつ分かりやすくスマートに凝縮し、優れたパッケージツールとして現在全世界で実践されつつあります。わが国でも邦訳され(精神科看護37, 2010)、国内で通用するかどうかの研究が行われました(平成25年度厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業),精神科救急医療における適切な治療法とその有効性等の評価に関する研究(H23-精神-一般-008))。
行動制限量は、毎年6月30日時点の悉皆調査(精神保健福祉資料)にて増加傾向が指摘され、近年実態調査も行われましたが、その要因は不明確のままです。一方、コア・ストラテジーという採るべき手段を理解し、実践すれば最小化が促進されることは明らかですが、最小化活動についての詳細な調査はありません。本研究では、行動制限最小化の本質的要因となる職員意識、患者参加などに着目した我が国の実態調査を行い、実践可能で本質的な最小化活動を標準化することによって実効的な行動制限の最小化を目指し、その具体的な成果物として標準最小化方策の普及ツールを開発しています。
2007年の英国精神医学雑誌(British Journal of Psychiatry)のレビューによれば、精神科医療における行動制限を減じる方法として、これまでに、(州レベルの)行政サポート、政策と規制、リーダーシップ、実践状況の検討、スタッフの統合、治療方針の改善、スタッフ/患者比の増加、行動制限エピソードのモニタリング、精神科救急介入チーム、スタッフ教育、モニターカメラによる患者観察、薬物による介入、患者の積極的な最小化活動への参加、治療環境の変化、施設環境の変化、施設焦点の採用、スタッフの安全と労働条件の改善、等があげられています。これらに関して、コア・ストラテジー諸策の実行可能性と併せ、当研究班で調査を行ったところ、我が国では改善すべき課題が多くあることが明らかとなりました。また、行政支援や患者の治療参加についてはなじみがなく、理解が進んでいない実情が判明しています。

図.精神科看護師を対象とした「精神科医療における行動制限(隔離・身体的拘束)に関するアンケート」(令和2年度厚生労働科学研究「持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究」(研究代表者:竹島正))より

このような結果をふまえ、分担研究として、ある自治体の先進事例を参考にしたうえ、行動制限実施量とともに最小化活動の実態をモニタリングし、当事者参加を盛り込んだ行政支援方策を具体化していくための方法論を確立することを目指しました。そのための成果物として、都道府県単位の行政主導による最小化法の普及モデル(政策パッケージ)の開発に取り組むとともに、エキスパートオピニオンによりさらなる最小化手段を探ります。パッケージは①活用マニュアル、②コア・ストラテジーの学習ツール、③各都道府県の現状データ、④地域の行動制限最小化計画作成のためのツールなどから構成され、各自治体が関係者協議の中で採り得る方策を選択し、各医療機関における取組を把握すると同時に相互支援していこうという新たなコンセプトです。医療機関の自助努力のみならず、当事者らの参加をはじめ、疾患のあるなしにかかわらず、すべての関係者が自分のこととして、知恵を出し合って適切化に努めることが重要と考えられます。

分担研究者 杉山直也(国立精神・神経医療研究センター)

NEWS

2022.03.31

本研究によるNDB(レセプト情報・特定健診 等情報データベース)を基にしたモニタリング指標と解説を更新しました(付表4.12の2019年に、付表4.25の情報が重複して含まれていたものを修正)

2022.03.29

本研究によるNDB(レセプト情報・特定健診 等情報データベース)を基にしたモニタリング指標と解説を更新しました(付表2.2 特定時点の退院患者割合 (入院形態×認知症区分)を追加、表8 定義の相違の解説を修正)

2021.12.23

本研究によるNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を基にしたモニタリング指標の集計結果の一部について、エラーがあったため修正しました(「付表1. 地域平均生活日数」「付表2. 特定時点の退院患者割合」「付表4.25. 一般病床における入院精神療法」「付表5. 傷病名情報に基づく患者数」のうち、一般病床入院が係る患者数等)

2021.12.07

本研究によるNDB(レセプト情報・特定健診 等情報データベース)を基にしたモニタリング指標と解説を更新しました(付表5に総外来患者数・総入院患者数を追加、定義の相違の解説を追加等)

2021.11.15

本研究によるNDB(レセプト情報・特定健診 等情報データベース)を基にしたモニタリング指標と解説を更新しました(更新版は前回公表分を含んでいます)

2021.11.15

TOPICSに「精神科医療における行動制限最小化活動のモニタリングによる最小化支援」を掲載しました

2021.09.15

NDB(レセプト情報・特定健診 等情報データベース)を基にしたモニタリング指標と解説を掲載しました
【報告】NDBを基としたモニタリング指標作成の報告|大正大学地域構想研究所(chikouken.org)

2021.08.06

TOPICSに「精神科と精神科以外の診療科の連携について-日本病院会会員病院とかかりつけ医への調査をもとに-」を掲載しました

2021.08.06

令和2年度630調査を掲載しました

2021.03.30

ウエブサイトを公開しました